5回にわたり、中学受験グノーブルの理科科の先生による座談会を連載いたします。

-中学受験を通して伸ばす理科の力-
中学受験の理科の特色や効果的な学習法、グノーブルの理科の指導や授業の特色などについて理科科の先生3名に語っていただきました。(『グノレット』18号掲載予定「グノーブル 理科講師座談会」より)

グノーブルの理科の特色とは~その1~

nagai永井 志望校合格のために徹底的な学習指導をしていくことは当然のこととして、そのうえで、わかる楽しさなり、悩む経験なり、毎回の授業や教材を通じて子どもたちにいろいろな物事に触れてもらい、いろいろな経験を積んでもらいたいと思っています。理科は「理」由の科目、「理」解の科目、「理」論の科目、「理(ことわり)」を学ぶ科目です。もちろん表面的な知識や数の処理も当然必要ですが、なぜそうなのか、原理原則などを過去の科学の歴史に基づいて知り、理解し、習得する。そして、その習得したものを子どもたちが精一杯活用して過去の歴史のさらに上を行くことが科学の発展です。グノーブルの理科で培った「理解できたときの喜びや充足感」「知識や原理を活用しようとする姿勢」などを糧にして、豊かな人生を歩んでいってほしいと願っています。我々の仕事はそのお手伝いです。

カリキュラムの流れを紹介すると、4 年生では理科的な常識をたちにたくさん触れてもらう授業をします。そこから身の回りの事象を紐解くことができたときに、子どもたちは「なるほどそういうことだったのか」と思い、学習に対する喜びを感じ、充足感を得ることができます。理科的な物事の見方や常識を増やし、身の回りの事象を紐解きながら充足感を味わうのが4年生の授業です。

次に、5 年生では中学入試に必要な主要単元を一通り履修することになります。もちろん4 年生時に学習している単元もありますので、学年をまたいで同じ単元を複数回学習できるような螺旋型のカリキュラムになっています。さらに、ある単元を学習する際は、そこからの数週間で同じ単元や関連のある単元がある程度の回数続いて登場するようにカリキュラムを組んでいます。例えば「熱」という単元を初めて勉強する4 年生では、「熱とは何か」「熱の伝わり方」「水の三態変化(状態変化と熱や温度の関係)」といった学習内容が3 回ほど連続して登場します。飛び石のようなカリキュラムでは深い概念理解が得られず、知識も身につきにくいと考えます。

6 年生になると、4 年生や5 年生で扱ってきた内容を徹底的に固めつつ、高度な入試問題にも対応できるように応用的な内容も上積みして、演習量をしっかり確保しています。

mori2森 カリキュラムを決める際、「こうすれば子どもたちに深い関心や理解をもってもらえる」「合格のための力の定着をはかれる」「子どもたちの学力の進捗に合わせてどの時期に何をウェイトとして上げていくか」などについて、私たちは議論を重ねました。

先ほども例にあがりましたが、グノーブルでは、例えば「浮力」であれば、5 年で「浮力1」「浮力2」といったようにプロローグ部分から深い部分までを続けてしっかりと学習してから先に進むようにしています。このような一続きの単元の学習する時期を分けてしまうと、例えば「浮力1」をやっただけでは根底の理解を得られずに表面的な学習で終わってしまいます。一方、「浮力2」の授業の時には、再度「浮力1」の内容をやり直すことになってしまいます。グノーブルでも当然単元を繰り返すカリキュラムを組んでいますが、最初の授業である程度深いところまで理解させ、それが定着度として100%でなかったとしても、根っこの部分には浸透させておくという点が特色といえるのではないでしょうか。

永井 4 年生の前期の授業の中で「昆虫の完全変態と不完全変態はどちらが得なのか?」という質問が出ました。「どっちだと思う?」と聞くと、「完全変態!不完全よりも完全の方が良いに決まっている」と言うのです。私からは、完全変態には自分では動けない蛹(さなぎ) の時期があり、保護色になる場合もあることから推察すると、敵から狙われやすい時期だともいえる、という話をすると「そうか、蛹になると逃げられないなら、蛹の時期がない不完全変態の方が良いのかな」という意見が返ってきます。すると別の生徒が「でも、きっと完全変態の方が良いこともあるはずだ。だって、不完全変態の方が良いなら、みんな不完全変態のはずじゃないか」と言いました。こうしたやり取りの中で、完全変態の昆虫は蛹の時期があることで、成虫で大きく姿形を変えることができること、例えば口の形が「かむ口」から「吸う口」へと変われば食べ物を変えられ、そうすることで幼虫か成虫のどちらかのエサとなる植物が減少したりしても種として絶滅しにくくなること、といった内容も生徒に投げかけたり考えさせたりしていきながら授業を進めました。

ちなみに、こうしたことは実際の入試問題で出題された内容でもあります。それぞれの昆虫を10 個ずつ覚えなさいということも大切なのですが、極論を言うとそれは後回しでもいいわけで、ある物事を多角的に見ていく、そういうことを習慣づけることができるように授業を進めています。~その2へ~

理科講師座談会 出席者のご紹介

上原 佑・永井 裕康・森 英明(中学受験グノーブル理科科)