中学受験と大学受験。一言で「受験」といっても、そのありようは大きく異なります。それでもグノーブルには、大きな視点に立って生徒たちを育む共通する姿勢があると言います。
 そこで今回、大学受験グノーブルから2名、中学受験グノーブルから3名の先生方にお越しいただき、日々の授業での指導においてどのような工夫をされているのかをお聞きしました。
~学内誌『グノレット』22号の記事より~

受験に向かう親と子の距離感とは その2~中学受験編

言語を習得する過程では、子どもの言語能力の大半は親の使う言葉で決まる

山下:中学受験担当の立場としては、親が関わることは必要不可欠な要素だと思っています。年齢が下がれば下がるほど、その関係は強まるでしょう。特に言語を習得する過程における親の関わりについて言えば、子どもの言語能力の大半は、親の使う言葉で決まります。親のしゃべり方を子どもはよくまねるからです。
 例えば、絵本の読み聞かせが非常に上手な親御さんのもとで育てば、情緒の発達の面では明らかに有利な場合が多いです。先ほどの清水先生の英語のお話で「筆者の論理を的確に辿る」という点に深く共感したのですが、国語の場合も同様で、これは「音読が大切」という話にもつながります。どんなに堅苦しい論説文でも、
「この筆者はどんな表情で文章を書いているのだろうか」と想像できるか否かで読み取りの精度は変わるのです。
 一方で、親御さんの関わりが「干渉」に変化してしまう分岐点は、子どもが成長していく中で、親以外の存在を模倣し始めた時に起こりやすいと思っています。様々な文章の書き手、あるいは作中の人物の中から、生徒たちが共感を覚える存在が出てくるかもしれません。それは文章に限らず、現実社会でも同じです。そういった共感ができるように指導をしていますし、生徒たちの中に生きていく上で必要なロールモデルを増やしていきたいと思っています。
 そのようなロールモデルを模倣し、子どもがあらゆる「生き方、価値観、口調」を取り入れて成長し始めようとしている時に、親御さんが口を挟むことで、結果として取り入れの妨げとなってしまうこと、それが「干渉」ということになるのかもしれません。その時、「親の言うことだけ聞いていればいい」と言ってしまうのではなく、子どもがロールモデルを模倣していく過程で、親の影響というものを子ども自身の力で相対化できる力を身につけていくことこそが大切だと考えています。

中学受験期の親の関わり方はケースバイケース

盛田確かに言語形成期である幼児期は親御さんがたくさん関わった方がいいと思いますが、中学受験期ではケースバイケースだと言わざるをえません。親御さんが干渉した方がうまくいくケースもありますし、中学受験の段階ですら干渉しない方がうまくいくケースもあります。その前提として本人のポテンシャルや、個々の環境要因があるからです。
 長い目で見ると親御さんが干渉しない方が子どもは大成するという傾向はありますが、直近の中学受験を乗り越えることを念頭に置くのであれば、親御さんがサポートした方が結果は出やすいという面もあります。
 「うまくいったかどうか」の基準をどこに置くのかはご家庭の考え方による部分もあります。だからこそ親子の関係については、塾からアドバイスはできてもそれがすべてということではなく、まずはご家庭でしっかりと考えていただくことが必要だと思っています。

あえて反対意見を提示して、客観的に考える材料に

永井:「親御さんも子どもに対して敬意を持って接してほしい」という思いを強く持っています。
 例えば、「うちは主体性を持って勉強しろという教育方針ですから、基本的にはすべて子どもに任せます」という親御さんがいらっしゃったとします。主体性を尊重して子どもに考える機会を与えるということは大変良いことです。しかし一方で、任せすぎて子どもたちがサポートを求めているサインまで気づかずに無視してしまうということも考えられます。そのような親御さんが相談にいらっしゃる場合には、あえて反対意見を提示して、客観的に考えていただけるようにしています。
 逆に干渉しがちな親御さんが相談に来られる場合でも、自主性の大切さをご理解いただくために反対の意見をお伝えすることもあります。
 ご家庭の教育方針を頑なに貫いたり、塾の講師の意見をうのみにするのではなく、お子さんのことをよく見て、程よい距離感を探り続けていただくことを願っています。

座談会に参加された先生方

纓田邦浩(大学受験グノーブル数学科)
清水誠(大学受験グノーブル英語科)
永井裕康(中学受験グノーブル理科科)
盛田一樹(中学受験グノーブル算数科)
山下倫央(中学受験グノーブル国語科)

第1回 大学受験と中学受験 それぞれの教育現場の今~その1 
第2回 大学受験と中学受験 それぞれの教育現場の今~その2
第3回 楽しく学べる工夫 その1~中学受験編
第4回 楽しく学べる工夫 その2~大学受験編
第5回 受験に向かう親と子の距離感とは その1~大学受験編
第7回 伸びる生徒と伸び悩む生徒の違いはどこにあるのか?
第8回 小・中・高の一貫した教育の実現