中学受験と大学受験。一言で「受験」といっても、そのありようは大きく異なります。それでもグノーブルには、大きな視点に立って生徒たちを育む共通する姿勢があると言います。
 そこで今回、大学受験グノーブルから2名、中学受験グノーブルから3名の先生方にお越しいただき、日々の授業での指導においてどのような工夫をされているのかをお聞きしました。
~学内誌『グノレット』22号の記事より~

楽しく学べる工夫 その2~大学受験編

筆者の伝えたいことを知ることで新たな視界が開け、喜びを感じながら思考力、想像力の幅を広げていくことを目指します

清水:勉強をしていて楽しいと思うことのひとつは「発見」だと思います。自分とは違うものの見方や感性を学ぶこと、書き手の立場を想像してみること、筆者の論理を的確に辿って新しい物事を理解していくこと。これらを大切にするのは英語も同じです。
 高校生のリーディングの授業で頻繁に行っている要約は、知的にレベルの高い英文を、誤解も曲解もすることなく的確にまとめるという学問の土台を築く作業です。英語・日本語の違いはあれ、文章を通して自分の理屈ではなく相手の主張や論理展開を正確にまとめるという点では、小学国語から一貫した学びがあります。英文の中には筆者独自の考え方、伝えたいことがあるはずなので、それを知ることで新たな視界が開け、喜びを感じながら思考力の幅も、想像力の幅も広げていくことを目指しています。ここには、狭い受験勉強にはとどまらない、生徒たちの将来を考えるグノーブル共通の姿勢があります。
 また、グノーブルでは英単語をただ暗記するという作業を生徒に強いることは絶対にしません。単語の語源や成り立ちまで踏み込んだ解説を聞くことで、単語の持つ文化的背景に触れ、単語について興味の持てる授業を行っています。印象が深くなればなるほど、単語が生きた言葉として記憶に残るようになります。

夢中になれる授業の実現には教える側の準備の積み重ねが欠かせない

纓田:中学生が実感する勉強の楽しさには2種類あると思います。1つは「知る喜び」を感じることです。単に事実を知っているということではなく、その理由を知った時の感動と喜びです。
 例えば、新中学1年生対象の「スタートダッシュ講座」で、「(-2)×(-3)=」の答えを尋ねると、中学受験経験者はほぼ全員手を挙げ「答えは“+6”」と答えます。ですが、では「なぜ“+6”になるのか」を尋ねると、サーッと手が下がります。そこでその理由を説明して、「あっ」と思ってもらえるとその後は単純な計算問題であっても楽しそうに取り組んでくれます。つまり、理由がわかって取り組むのと理由もわからず取り組むのとでは姿勢がまるで違ってきます。しっかり腹に落ちるかどうかがとても大切であると考えています。それは、生徒たちの表情からも容易にうかがうことができるのです。
 2つ目は「できる喜び、成長の楽しさ」を知ることが勉強を楽しいと思える要因です。全くできないことをずっと続けていても苦痛でしかありません。単純作業のような勉強の継続も苦行でしかありません。クラス中の誰もが「できる喜び、成長の楽しさ」を知ることができる授業に大切なのは、教える側の観察力と、的確な教材を用意する問題作成力、そして授業の構成力です。クラス全員の手が動く問題と、半分くらいの手が動く問題、そして一部の生徒しか手が動かないだろう問題、これらを授業ですべては使わないとしても準備だけはしています。こうした準備の積み重ねが時間の経つのも忘れて夢中になれる授業の実現につながるのです。
 クラスのレベルを正しく把握し、適切な難易度の問題を提供することが、できる喜びを味わいながら、成長できる楽しさを実感してもらえることにつながると思います。
 そのためにも、大学受験の数学と中学受験の算数を両方担当している先生方に「中学受験ではどのレベルまで勉強するのですか」ということをよく聞いています。「小学生がここまでやっているのなら、中学生ならこういうこともできる」と中学生用のテキスト作りに活かしています。

座談会に参加された先生方

纓田邦浩(大学受験グノーブル数学科)
清水誠(大学受験グノーブル英語科)
永井裕康(中学受験グノーブル理科科)
盛田一樹(中学受験グノーブル算数科)
山下倫央(中学受験グノーブル国語科)

第1回 大学受験と中学受験 それぞれの教育現場の今~その1 
第2回 大学受験と中学受験 それぞれの教育現場の今~その2
第3回 楽しく学べる工夫 その1~中学受験編
第5回 受験に向かう親と子の距離感とは その1~大学受験編
第6回 受験に向かう親と子の距離感とは その2~中学受験編
第7回 伸びる生徒と伸び悩む生徒の違いはどこにあるのか?