『中学への算数』2024年2月号掲載の広告より
- 公開実力テストについてはこちらをご覧ください。
- 新中学1年生対象のスタートダッシュ講座についてはこちらをご覧ください。(大学受験グノーブルのHPへ移動します)
低学年時の学習を将来の財産に
低学年からの通塾。お子さんの「塾、楽しい」という言葉に安心しがちですが、それがそのまま受験へ向けての学習が本格化する高学年へスムーズにつながっていくのでしょうか。中学受験の学習にとって、低学年の時に心がけておくことは何なのか。算数・国語の先生に伺いました。
※以下はwebメディア「日経xwoman」のインタビュー記事の一部を再構成したものです。
授業における楽しさとは
兵頭講師(国語科。以下兵頭):「楽しい」という言葉の意味は多義的です。例えば冗談や語呂合わせ、その場限りの盛り上がりも、子どもたちにとっては「塾が楽しかった」ということになるでしょう。それをおもしろいと感じる生徒もいますし、それがいけないわけではありません。しかし学びの本質的な楽しさはまた別にあります。
国語なら、「この文章、すごくおもしろかった。続きが読みたい」「授業が楽しかった。家でもう1問やりたい」というおもしろさや発見、気づきを得られることが、本来の勉強の楽しさだと考えています。塾では、この本質的な楽しさを少しでも感じてもらえるように、工夫しながら授業を行っています。
三原講師(算数科。以下三原):進学塾では一般的に4年生以降、受験を見据えた学習が始まります。もちろん、3年生から4年生になって突然雰囲気がガラリと変わるわけではありませんし、高学年クラスが常にシーンとしているわけでもありません。子どもの発言をもとに講師が話を広げ、ワッと盛り上がる瞬間もあります。
ただ、学年が上がるにつれて、集中とリラックスのメリハリを付けられるお子さんが増えてくるので、授業もすぐに真剣な雰囲気に戻ります。表面的な楽しさとは異なる楽しさに気がつける、勉強の本質的な面に楽しさを感じることができる生徒が増えてくるように思います。
もしお子さんが塾を「楽しい」と言っているときはそれだけに安心せず、ぜひどのようなことを楽しいと感じているかを尋ねてみてください。
授業の様子を聞く方法
三原:例えば、授業で習ったことをお子さんに説明してもらう、親御さんが生徒役になってお子さんに話をさせてみるのも1つの方法です。
今日の算数はこんな内容で、国語はこういう勉強をしたとしっかり内容を話せる場合は心配ありません。一方、冗談は覚えているけれど、勉強内容は「テキストの〇ページをした」くらいしか言えない場合は、要注意です。集中が切れてしまっていて、授業の肝心な部分を聞いていない時があったのかもしれません。
授業の中では指名して答えてもらうなど、できるだけ一人ひとりのお子さんが授業に参加できるようにしていますが、お子さん自ら集中する姿勢になることがやはり大切です。そのためには、講師から授業の受け方を説明してもらうことも効果的なので、気になる場合はぜひ講師に相談してみてください。
兵頭:行儀良く座って熱心にうなずくことだけが授業に参加しているということではありません。わかったり気づいたり、おもしろいと思ったら喜ぶ。わからなかったらわからないとメッセージを出す。塾はそういう場所だということを、家庭でも伝えていただけるといいでしょう。
塾に通うモチベーションの保ち方
兵頭:表面的な楽しさ以外の面で、塾に通うモチベーションを持つことも大切です。親御さんは数年後の中学受験が念頭にあって、塾に通わせているかもしれませんが、低学年の子どもたちはそうではないからです。
三原:実際「〇〇中に行きたくて通っています」という子は低学年ではまれです。多くのお子さんは、親御さんに言われて塾に来ています。そういう子どもにとって、ほめてくれることは強いモチベーションになります。親御さんは、子どもに「あなたがやっていることに興味関心があるよ」というメッセージを伝え、子どもが話すことを興味深く聞いてあげてください。
兵頭:帰宅したらノートを見せてもらって、1つでもマルがあれば「すごいじゃない」とほめたり励ましたりするのも効果的です。その結果、お子さんは「もっとしっかり授業を聞いて、またお父さんやお母さんに見てもらおう」と思うようになります。こうして気持ちを引き立ててあげることが、低学年のお子さんが学びに向かい続ける1つのモチベーションになるのです。
家庭での勉強のフォローは必要か
兵頭:多くのお子さんは、塾で新しいことを学ぶことは大好きですが、家で反復・定着させることは一般的に嫌がります。しかし、それだと身に付くことは限られてしまいます。
親御さんには、反復・定着をするように粘り強く働きかけてほしいと思います。低学年のうちは復習問題を一緒に解いたり、「どっちがたくさんできるか競争しよう」と親子で競って覚えたりするのも効果的です。横にいて手取り足取り教える必要はありませんが、ある程度、関わることは必要です。
また、国語の授業の後は「どんなお話を読んだの?」とも聞いてあげることも効果的です。そこで親御さんもテキストの本文を読み、楽しんで味わう。感想を言い合う。こういった形で関わることでお子さんの学びへの意欲が増し、文章理解も深まりやすくなります。
三原:特に算数に多いのですが、低学年の内容は親御さんが教えられる範囲なので、つい教えたくなってしまうようです。手取り足取り、答えが出る直前の式まで教えてしまうという話をよく聞きますが、そのような学習の仕方が主になってしまうと子どもは親に言われた通りの式と数字を使うだけになっています。
これでは学ぶ上で大切な「本人の気づき」や「解けた」という達成感・喜びが奪われてしまいます。人間は本来、苦労して得た達成感を経験することが喜びであり、それが必要なのです。問題に取り組むときに、親御さんが先回りして教えることでその機会が失われてしまいます。
こういったことを続けると当然ですが、勉強が「作業」になり、長続きしなくなります。子ども自身が気づくのを待つことも、子どもと接する上で大切なことです。
一方で、目をかけることはしてほしいと思います。例えば、子どもが取り組んだ問題集の答え合わせ、丸付けなどをして、できたことをほめるのも一つの方法だと思います。
高学年に向けての準備
三原:高学年で演習量が増えていったときにそなえて、低学年のうちに計算力を鍛えておくことはお勧めします。計算力をつけることは、算数の問題解決能力を高めます。
例えば、問題で216という数が出たときに、「6×36」、「18×12」とすぐに分解できるお子さんと、極端なことを言えば「2で割れるかな」から始まるお子さんでは、まず時間的に差がついてしまいます。
目安としては3年生までに四則演算をひと通りやっておくとよいでしょう。学習指導要領より少し先取りになりますが、1~2年生の間は高学年に比べ時間的余裕があるので、少し早めに掛け算、割り算に触れておきましょう。市販のドリルなどをやるのもよいと思います。
兵頭:文章を読むにあたって、語彙が豊かな方が当然ながら状況をつかみやすく、文章をスムーズに読むことができます。語彙を増やす方法は本を読むことです。強制し過ぎると読書自体を嫌いになってしまうので、注意してほしいのですが、低学年の間に読書で語彙を増やすことはとても大切です。
読書に関して
兵頭:本になじむ機会を持つことが必要だと考えています。子どもは「この本、おもしろかった」という経験があれば、「ほかにもないかな」と探して、自分から読書をするようになります。しかし、そういう経験がない子にとって、読書は単にめんどうなものでしかありません。
今はクリック1つで手軽におもしろい動画が流れてくる時代なので、能動的に文字を読むという機会が少なくなっています。このような状況では、誰かが働きかけないと、おもしろいと思える本に出会うことはないかもしれません。
難しいことですが、親御さんは自分が子どもの頃読んで楽しかった本を伝えてあげたり、子どもが興味を持ちそうな本や図鑑を図書館から借りてきたりして、本になじめる環境を用意することが大切です。
低学年から通塾することの意義
三原:学習習慣をつけられることの効果は大きいと思います。低学年クラスでは、楽しんで考えながら行う課題が数多くあるため、学習習慣が自然に身に付いていきます。
高学年になると学習内容が増え、カリキュラムの進みが早いため、4~5年生で初めて塾に通うとなると、最初の半年くらいはまずペースをつかむことから始まりますが、低学年のうちに学習習慣をつけておくことで、比較的スムーズにそのスピードに慣れることができると思います。
兵頭:低学年の授業では高学年に比べていい意味での「脱線」に時間が割けます。「これってなんでだと思う?」という問いかけから、いろいろな意見が飛び出し、気づきが生まれたり、本質的な部分を掘り下げる時間も多く取ることができます。
こうした授業をきっかけに、学びの楽しさや、知ること・考える・想像することのおもしろさを感じて、読書や国語が好きになっていくということを体験するのは、中学受験といった枠にとどまらず、長い人生においてもそのお子さんの大きな財産なると考えています。
※グノーブルの算数・国語に関する低学年の学習の取り組みについては以下の記事でも公開しています。
【算数講師対談】
【国語講師対談】