中学受験と大学受験。一言で「受験」といっても、そのありようは大きく異なります。それでもグノーブルには、大きな視点に立って生徒たちを育む共通する姿勢があると言います。
 そこで今回、大学受験グノーブルから2名、中学受験グノーブルから3名の先生方にお越しいただき、日々の授業での指導においてどのような工夫をされているのかをお聞きしました。
~学内誌『グノレット』22号の記事より~

伸びる生徒と伸び悩む生徒の違いはどこにあるのか?

学習に向かう姿勢の根底にあるものは・・

永井:何をもって「伸びる」と言うのかによっても話は変わってくると思います。仮に成績を上げることを「伸びる」と捉えるのであれば、結局はたくさんの問題を解き、反復することが必要です。それに対して楽しみを感じられる生徒であれば、受験に合格するという視点では理想的な学習方法かもしれませんが、実際はそのような生徒ばかりではありません。ですから、生徒たちを個々に伸ばすという意味では、成績をいかにして伸ばすかということだけを話しても仕方ないと思います。
 成績も学力も学習意欲も、塾である以上はそのすべてを伸ばさなければいけないと思いますが、長い目で見れば学習に向かう姿勢を伸ばしていくことが大切であると考えます。小学生の場合、その姿勢の根底にあるのは、話をきちんと聞くことができるかどうかです。それが、あらゆる面において「伸びる」ということにつながっていると思っています。
 ですから、話を聞かない生徒に対しては、厳しい姿勢で臨んでいます。どうしても長い時間集中することができない場合は、様々な工夫をしたり、時には諭し、毅然とした指導をしていかなければならないこともあります。

言うだけではなく心でわかっている生徒

盛田:算数の技術的なことから言えば、計算能力が高い生徒の方がしっかりと得点できるようになります。計算力は将来の数学力にもつながります。
 ただしやはり、根本的には、話を聞ける生徒、素直な生徒が伸びます。基本が整っていることが応用力や独創力の土台になるからです。その上で算数に限らず全体の成績が伸びていく生徒に共通することは、目標への意識が高いということです。「自分はこうしたいんだ」というものを持っていて、「こうするには、これをがんばらないと」ということを口で言うだけではなく心でわかっている生徒です。

あらゆることを自分のこととして興味を持ち、好奇心の幅を広げるために

山下:逆に伸び悩む生徒についてお話しします。例えば教室で保護者向けのお知らせを配ることがあります。その時にすぐに読み始める生徒と、パッと鞄にしまう生徒がいます。知的好奇心の豊かな生徒は自分に関わることすべてに何か意味があり、「いる、いらない」ではなく、「わかりたい、知らずに放っておけない」と感じて内容が気になり、保護者向けのお知らせにも目を向けずにはいられません。さらに「これはどういう意味ですか」と聞いてくることもあります。
 「これは親が読むものだ」としまい込んでしまう生徒のご家庭では、塾のことはあまり話題にはならないのかもしれません。一方、配られてすぐに読む生徒は、お知らせを家に持って帰るとすぐに親御さんがそれを読まれるのかもしれませんね。お母さんが「ふむふむ」と目の前で読んで、「あら、そうなの。なんで?」というような会話をする環境があるのなら、子どもたちもまねをしてそれに興味を持ったり、理解しようとしたりするのではないでしょうか。
 そのような習慣によって、どんなことも、自分に関係のあることとして興味を持ち、好奇心の幅を広げていけるかもしれません。そのためには、模倣の対象になれるように、親だけではなく我々講師も含めて周りの大人全員が身をもって見本となる姿を子どもに見せられるといいでしょう。

退屈な作業ばかりしていると、頭はどんどん麻痺していく

清水:学習意欲や知的好奇心が旺盛であれば、当然、大学受験での良い結果につながります。同じ授業を受けていても、授業で新たに発見したことをしっかりと自分の頭で納得をして、それを丁寧に積み上げていくことができる生徒の学力は着実に伸びていきます。ただ漠然と大量の問題を解くのでは、退屈な作業になってしまいます。退屈な作業をしていると、頭はどんどん麻痺していきます。勉強にも世の中にも関心がある生徒たちは「なぜ?」「どうして?」という思いがいつも湧いてきます。勉強している内容が社会ともつながっていき、ますます関心が高まります。
 一つひとつをきちんと解釈した上で、目指すべき水準に対して自分がどの位置にいるのかということをきちんと客観視し、それをもとに実行に移せることが重要だと思います。

初めて授業を受けた時、全くできなくて涙があふれてしまった生徒でも・・

纓田:私たちは中学1年生から大学受験時までの成長を見ていますが、必ずしも初めは成績優秀でなくても、最終的に自分の目標を叶えていった生徒たちがこれまでにも多数いました。
 例えば、初めて授業を受けた時、全くできなくて涙があふれてしまった生徒がいました。その生徒はそこからスタートして、医学部を目指して一生懸命に勉強に取り組み、最終的には合格を掴み取りました。そんな生徒たちに共通した特徴は何だろうかと考えた時に思いあたるのは、いつまでも諦めずに粘り強く考えている生徒だとか、正答を出せていても熱心にこちらの話を聞いている生徒だとか、解説と違う解き方だった時に「この解き方はどうですか」と聞きに来る生徒だったり…。
 総じてみると「自分の足で立ち、歩こうとしている生徒たち」だと言えるかもしれません。逆に中学2年生以降に入塾する生徒の中からは「算数は面白かったけれど数学は面白くない」「数学はよくわからない」といった声もあります。そうした生徒は一般的に抽象化することが苦手だったり、受け身な学習態度で数学を勉強していることが多いように思います。

 

座談会に参加された先生方

纓田邦浩(大学受験グノーブル数学科)
清水誠(大学受験グノーブル英語科)
永井裕康(中学受験グノーブル理科科)
盛田一樹(中学受験グノーブル算数科)
山下倫央(中学受験グノーブル国語科)

第1回 大学受験と中学受験 それぞれの教育現場の今~その1 
第2回 大学受験と中学受験 それぞれの教育現場の今~その2
第3回 楽しく学べる工夫 その1~中学受験編
第4回 楽しく学べる工夫 その2~大学受験編
第5回 受験に向かう親と子の距離感とは その1~大学受験編
第6回 受験に向かう親と子の距離感とは その2~中学受験編
第8回 小・中・高の一貫した教育の実現