中学受験と大学受験。一言で「受験」といっても、そのありようは大きく異なります。それでもグノーブルには、大きな視点に立って生徒たちを育む共通する姿勢があると言います。
そこで今回、大学受験グノーブルから2名、中学受験グノーブルから3名の先生方にお越しいただき、日々の授業での指導においてどのような工夫をされているのかをお聞きしました。
~学内誌『グノレット』22号の記事より~
大学受験と中学受験 それぞれの教育現場の今~その1
数学は新しい大学入試・システムに向けてカリキュラムを改編中!
論理的思考力を高め、一人ひとりの生徒と向き合って授業を進める基本姿勢は不変です
纓田:今、教育全体が知識偏重から考えたり推測したりすることを重視する傾向にシフトしてきています。例えば大学入学共通テストに向けたプレテストの問題を見ても、発想力や論理力が重視されています。先を見越して自分で必要な情報をいかに集めるのかという力も求められています。
数学科では現在、こうした新しい大学入試やシステムに向けて、中学受験の先生方とも意見を交換しながらカリキュラムやテキストを刷新しています。変わっていく制度に対応できるような工夫をしているのはもちろんですが、けっして変わらないものもあります。
その1つはグノーブルの「数学」の核である「物事を論理的に考え、自分の力で問題を分析し、解決する能力を身につけてもらう」という姿勢です。ここでの数学の学習を通して生徒の将来、大学生、社会人になってからも役立つものの考え方、見方を身につけてほしいと考えています。
たとえば、東京大学の「アドミッションポリシー」の「高等学校段階までに身につけてほしいこと」の一節に「数学的に問題を解くことは、単に数式を用い、計算をして解答にたどり着くことではありません。どのような考え方に沿って問題を解決したかを、数学的に正しい表現を用いて論理的に説明することです」とあります。数学の中には、単純に数学的な技法や知識を問われる問題もありますが、とりわけ東大等の入試問題では知識の多寡ではなく、知識をいかに運用するかが問われます。いわば「やさしい良問」です。これは、難解であることを善しとするのではなく、解き方だけを見れば当たり前の手法を使っているのだけれど、その当たり前のことが易々とは出てこない盲点を突くような問題です。こうした問題に向き合う時に求められるのが「論理的思考力」なのです。重箱の隅をつつくような話や、テクニックを使って要領よく得点するのではなく、論理的思考力を高めていくという基本姿勢は変わりません。
また、一人ひとりの生徒と向き合って授業を進めていく点も変わりません。大学受験で求められる数学を念頭におきながら、目の前の生徒のレベルにあったものを提供しています。もう少しで解けるというレベルの問題が解いていて一番楽しい。簡単すぎても、難しすぎてもつまらないのです。生徒の手がどれだけ動くか、実際の授業では生徒の表情も見ながら問題を選んでいます。一人ひとりのノートや答案に常に目を通す姿勢もすべての学年で堅持しています。
グノーブルが大切にしてきた「知的レベルの高い、コミュニケーションと思考に使える英語力」の習得を、4技能を踏まえた上で新カリキュラムに組み込んでいきます
清水:英語科でも中学生の英語の新カリキュラム作りに取り組んでいます。
カリキュラムを作成する際、中学生から大学受験生までを幅広く担当していることを活かして、全体を俯瞰しながら一貫した流れを作っていくということを強く意識しています。
最近の英語教育では、その基準をヨーロッパ言語共通参照枠「CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)」に置いています。そして「CEFR」をもとにして生まれた、より日本の教育に合わせた「CEFR-J」というものが作成されました。「CEFR-J」では、英語を使って具体的にどのようなことができるかがリストアップされていて、4技能すべてに関する指導を行えるように作られており、グノーブルの中学部の先生たちも、テーマやシチュエーションを中心に、使える表現や語彙を集めてカテゴリー分けをして、すでにプリント教材の中に盛り込み始めています。
また2020 年度からの本格的な始動を目指し、カリキュラムの全面改訂も行っているところです。内容は、中学1・2年生を中心に、基礎を身につけることに加えて、自分の身の周りについて発信することをテーマに、英語を道具として使いこなせるようになることを主眼としています。英語は小学5・6年生から正式に教科化されますので、中学1年生が習い始める内容も当然変わります。このような変化に対応するため、グノーブルが大切にしてきた「コミュニケーションと思考に使える、知的レベルの高い英語力」の習得を、4技能を踏まえた形でカリキュラムに組み込んでいます。
グノーブルで行っている授業は一方通行型ではなく、インタラクティブな形でやり取りをしています。生徒も先生もお互いに気づきを得ながらその場を作り、より考えを深めていきます。こうした授業を毎週実践することで、小手先でない本来の英語力が向上し、テストでも高得点が取れるという流れが理想的だと考えています。
学校教育とは異なる言葉の素養を身につける場として、グノーブルの国語の授業はますます重要な役割を果たすと思います
山下:私の担当科目である国語に関して言えば、まず今現在について日本語が軽視されつつある時代だという印象を持っています。具体的には、活字離れという大きな趨勢があり、さらにカタカナ言葉で済ませてしまう風潮、漢字は使わずにひらがな表現のままでいいといった傾向も見られます。この現状を踏まえると、学校教育の枠とは別のところで、言葉の素養を身につける場としてグノーブルの授業はますます重要な役割を担う必要があると思っています。
言葉には大きく2つの機能があります。一つは思考を的確に進めるための“論理の道具”としての側面です。もう一つは、豊かな感情を表現し、人に伝えていく“情緒の表現伝達手段”という側面です。いろいろな文章をもとに、この2つの機能を学んでもらいたい。特に小学2・3年生のうちから子どもたちには、きちんとした論理的な言葉の紡ぎ方、それと同時に情緒の幅広い表現の仕方を身につけてもらいたいと思います。
小学生の国語の学習では、生徒たちの内的世界、人間理解の幅を広げることが大切であるとも考えています。この一歩が踏み出せるようになると、あの人はどういう人だろう? この人は? では昔の人は? 異文化の人は? と生徒たちの知的好奇心が次々と広がっていきます。自分とはかけ離れた人のことでも言葉を通して実感できるようになれば、国語は楽しい、もっと学びたいと思えるようになるのです。
そのために生徒たちに眼差しを常に向けて、納得できているかどうかを見極めながら、たくさんの「あっそうか」につなげられるような時間をできるだけ多く持てるように心がけています。
座談会に参加された先生方
纓田邦浩(大学受験グノーブル数学科)
清水誠(大学受験グノーブル英語科)
永井裕康(中学受験グノーブル理科科)
盛田一樹(中学受験グノーブル算数科)
山下倫央(中学受験グノーブル国語科)
第2回 大学受験と中学受験 それぞれの教育現場の今~その2
第3回 楽しく学べる工夫 その1~中学受験編
第4回 楽しく学べる工夫 その2~大学受験編
第5回 受験に向かう親と子の距離感とは その1~大学受験編
第6回 受験に向かう親と子の距離感とは その2~中学受験編
第7回 伸びる生徒と伸び悩む生徒の違いはどこにあるのか?
第8回 小・中・高の一貫した教育の実現