4回にわたり、中学受験グノーブルの算数科の先生による座談会を連載いたします。

-中学受験を通して伸ばす算数の力-
中学受験の算数の特色や効果的な学習法、グノーブルの算数の指導や特色などについて算数科の先生3名に語っていただきました。(『グノレット』20号掲載「グノーブル 算数講師座談会」より)

第2回 グノーブルの算数の指導2 志望校対策と入試問題の変化

志望校対策について

伊藤:グノーブルの6年生は5月のゴールデンウィーク特訓から志望校別の授業がスタートします。その後、8月のお盆期間の夏期学校別特訓、9月からは日曜日の志望校別特訓で本格的に志望校対策を行います。

盛田:志望校対策について全般的なことをお話ししますと、基礎学力が身についていなければ、志望校への対応力を磨いても効果は上がりません。どちらがより大事かといえば、基礎学力をきちんとつけるほうが大切です。

伊藤:そういう意味ではやはり一通りの分野をしっかりとできるようになったうえで、志望校対策を行うべきだと思います。

盛田基礎学力が完成する時期というのは生徒によって異なるので、算数が苦手なお子さんは9月の段階で志望校対策を始めるよりも、一般的な力を鍛えることを続けたほうが近道となる場合もあります。春頃に基礎学力が完成している場合であれば、その時期から志望校対策の学習をしても良いかと思います。過去問練習も夏前から取り組んで良い場合もあれば、9月でもまだ早くて、10・11月から始めるのが適切な場合もあり、ケースバイケースの面が大きいです。

三原:学力が完成するイメージとしては太い幹となる土台の部分の学力を4・5年生,そして6年の前半で作っておいて、最後の枝葉の部分を志望校対策という形でつけていきます。実際の入試問題の切り口や問い方に慣れるという意味で、9月以降の志望校対策やオープン模試で志望校の傾向に合ったものを演習することは、自信にもつながります。ただ、極論になりますが、志望校対策を行わなくても合格できる場合もあります。実際にはそう多くはないとはいえ、きちんとした実力が備わればどの学校にでも対応できるとは思います。

昨今の入試問題の変化

伊藤:少し長いスパンでみると、入試問題は難しくなってきていると思います。例えば、30年以上前のものと比べたら多くの中学校で問題の難易度は上がっています。ある学校が出題したものを塾が対策をする。翌年に別の問題を出してくる。それをまた塾が対策をするという、いたちごっこのようなところがあって、結果的に難化してきたと言えます。
実際の入試問題を数多く見ていて思うことは、「この学校はこういう問題が出る」というようなこととはむしろ逆で、どの学校もさまざまな問題を出題してくるということです。

三原:20~30年くらい前であれば,学校での成績が良いお子さんが6年生の途中から中学受験の準備をしても間に合うこともありました。ところが近年では、「中学受験の算数」を4年生ぐらいからしっかり学んでいかないと、なかなか追いつけない。これも言いかえれば入試問題のレベルが上がっているということになるでしょう。

盛田:一方で、入試問題を作る中学校の先生方の苦労も相当なものなのではないかと想像します。思考力を問う良問を作成しても、おそらく過去にどこかで似たような問題が出されている。昔に比べて受験情報が手に入りやすく共有されるようになったので、ひたすら過去問で鍛えた子が高得点を取ってしまう場合もあります。このような、6年生段階での習得スキルの有無で入学を判断することが、中学校にとって良いことなのかどうかはわかりません。一方、その場で考えさせる問題を出そうとしても、学習指導要領の範囲内で作問するとなると、出せることがかなり限られてしまいます。これまですでに出し尽くされているところで、さらにまだ見たことのないようなオリジナル問題を作るというはかなり難しいのではないでしょうか。

グノーブル算数科による難関中対策のエッセンスは一部書籍化されてます。

伊藤:一時期、その場で考える力や調べ上げて答えまで辿り着く力をみる問題が増加傾向にありました。しかしここ最近は、そのかわりに処理力を問う問題、読解力や条件の読み取りを計るという問題が増えてきた印象があります。その場で試行したり調べ上げたりする問題は、入試当日たまたまできたか、できなかったという面があり、選抜試験の問題としては減っているのではないかと思います。処理力や読解力を身につけ、きちんと読み取りさえすれば、問題自体は長くても難しくはない場合があることは生徒に意識させていきたいですね。

算数講師座談会 出席者のご紹介

伊藤 琢真・三原 孝志・盛田 一樹(中学受験グノーブル算数科)