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5回にわたり、グノーブルの算数科・数学科の4名の先生による座談会を連載いたします。

 グノーブルでは、中学受験の算数、中学部の数学、大学受験の数学を指導するもの同士が密に連携し、一貫した方向性のもと、生徒一人ひとりに眼差しを向け、一人ひとりが真の力を培える支援をしていきます。高い次元での「算数・数学の連携」を確立するために私たちが行っていることについて、先生方による座談会の様子をお届けします。(本連載はグノレット14号掲載予定の「グノーブル 算数×数学講師座談会」と同じ内容です。)

koshikawa越川:どの単元でも楽しんで取り組むことが力をつける基本だと思います。中学の時に、図形問題を楽しむ土台ができている生徒、親しんでいる生徒は、それが高校数学でも大きな力になってくる。そうしたことを小学生から中学生、高校生という大きな流れの中で、先生同士が情報の共有を行いながら一貫して見ていけるというのは、生徒にとっても、また、私たち教える側にとっても、非常に大きなメリットだと思います。

 

 

oda纓田:算数から大学受験の数学までは、とても長い道のりです。生徒たちが、いくつものハードルをスムーズに通過できるように、そして次の世界に大きく羽ばたけるように導くことが私たちの役割です。中学受験を目指して算数を学んできた生徒たちが、何をどのように勉強してきたかなどの情報を共有できた上で中学以降の指導ができるのは、大きなメリットだと思います。

 

sanada眞田:小学生の授業でも、中学生、高校生の授業でも、担当するもの同士が自由に見学できるチャンスがあることは連携の大きなメリットです。たとえば算数担当者の場合、今まで以上に具体的に中学進学後のことを考えて生徒指導にあたれます。

 また、中学受験のために通っていた塾を終了して、新たな塾探しをするというのはなかなか大変なことです。それは、中学受験の塾に満足していた場合、なおのことです。そうした意味でも、共通の文化を持った、同じ空気を感じられる塾があるというのは大きな安心感にもつながるはずです。この点も小中高の一貫教育を行う上で大きなポイントになります。

miura2三浦:中学受験が終わっても、1週間くらいすると自分たちから「塾に行きたい」と言い始める生徒はたくさんいます。同じ方針、同じ文化を持ったグループの中に、中学生、高校生が学ぶ信頼できる塾が存在しているというのは、生徒や保護者の方々にとっては大きな安心材料です。

 また、実際の授業の中でも、1月、2月はこういう授業をやっているけれど、この先中学に行って、春や夏にはこういう授業をやる予定だ、あるいは高校に行ったらこういうことをやる予定だ、ということが事前に把握できていれば、私たちも「今、何を教えるべきか」を整理できます。

眞田:同じ看板のもとに中学受験から大学受験まで併存する塾や予備校は他にもありますが、積極的な連携を行って、より良い環境をつくっていこうとしているのはグノーブルが初めてだと思います。中学受験を終えた生徒たちに、気持ちよく「大学受験もグノーブル」と言えると思うとうれしいですし、より良い小中高の一貫教育ができるように力を尽くしていきたいと考えています。

中学受験、大学受験の指導者として

三浦:グノーブルでは、生徒たちが自分で考えて解決する力をつけていくことを常に大切にしていますが、中学受験指導の場合、それは小さな一歩から始まると思います。最初は、「答え合わせをしたら合っていた」という段階です。正解だというだけで1つの感動です。それをきっかけに、だんだん難しい問題に挑戦して、あきらめずにがんばれるようになっていけばいいのです。少し難しい問題にかじりついて「解けた!」という経験ができれば、感動はより大きくなります。そのうちに、解けなくて頭がジリジリする感じでさえ楽しいと思えるようになります。

 こうやって生徒たちがたくましくなっていく陰で、私たちは、どんな問題を与えていくのか、教室の雰囲気はどうか、といったことにいつも気を配っています。生徒たちの成長は何よりもうれしいことですから、私たちも一生懸命手伝いたいと思います。

眞田:グノーブルに通う生徒たちは、普通の小学生が経験する以上のことに触れています。頭をひねったり、手を動かしたり、いろいろな角度から見てみたりしながら、それでも分からない苦労も多く経験するでしょうが、解き方に気づいたときのドキドキ感も、達成感も人一倍経験するはずです。「もっといい法則があるはず」、「もっといい調べ方があるに違いない」と没頭する生徒もたくさんいます。生徒たちは、算数・数学の森を探険しているようなものです。少し大げさな表現になりますが、この森は、数千年の間、人類がさまざまな発見をして興奮を味わってきた森ですから、探険は面白いに決まっています。

纓田:中学受験を最終ゴールにして、正解を出すトレーニングに終始したのでは、合格という目標を達成した瞬間に力が抜けてしまうかもしれません。でも、「算数は楽しい!」という手応えを持った生徒たちは、数学にも新しい発見の興奮があるんじゃないかと期待して中学部に来てくれると思います。私たちも、その期待を上回る環境を提供していけるようにがんばります。

 小学校のときに算数が得意ではなかった生徒たちも、安心して来てくださいと言っておきたいと思います。これまでも、中学生になってから数学がどんどん好きになった生徒はたくさんいます。生徒たちの個性はさまざまですから、小学生のときに算数の楽しさに目覚めていなくても、きっかけと環境があれば数学を得意科目にできるのです。

越川:中学受験も大学受験もゴールではないという考え方は、基本的にはその通りだと思います。しかし、その一方で、「それでも数学は嫌いだ」という生徒たちにも役立ちたいとも思っています。人生の通過点である大学受験を、生徒たちがなるべくスムーズに越えていけるようにするのも私たちの大きな役割です。

眞田:生徒が自分で考える姿勢を見守っていくことは、中学受験の場合には特に忘れてはならないことだと思います。ときに、「この問題は教わったことがない」と言う生徒がいます。思考が止まってしまうのは初めのうちは仕方のないことです。そのときに私たちがどう導けるかです。工夫の大切さと言いますか、生徒たちが持っている知識は組み合わせ方次第でまだまだ力を発揮できる、さらに考えを進められる、そう本人たちが気づけるように導けるか、ということです。

 変化の激しい現代には、「知識は使い方次第で応用が利く」とか、「知識の組み合わせ方が新しい発想につながる」とか、小学生の頃から経験上知っているというのは大切です。その経験をうまく促す環境を作っていくことも私たちの仕事です。

三浦:算数や数学に限らず、何かのテーマについて議論する時に、西洋の人たちは、意見の裏付けや理由をすぐに求めてきます。日本人としてみると、「意地の悪いことを言うな」と思うこともあります。もちろん彼らは意地悪をしているわけではありません。こうした議論への耐性は、論理性が求められる算数や数学の学習を通して培えると思います。実際、大学受験の数学では、かなり高度な論理性が要求されています。

 算数や数学で身につけられる発想力や独創性も、世界的に見ても非常に高いレベルにあると私は思います。

越川:大学に国際競争力が求められる中で、数学の受験問題も正しい方向に推移してきているように感じます。レベルにおいても高度です。1つの問題の中に考えることがたくさん出てきます。問題文を読んで、条件を全て把握する、目標は何かをしっかり捉える、その上で論理的に考えていく、といったことが要求されます。発想力も必要です。ある部分のことだけ考えていればいいわけではなく、柔軟な発想や、いろんなことを同時に考える過程を経て、やっと1つの答えに辿り着くわけです。よく、「人生の問題には正解がないので、正解が1つの受験勉強は役立たない」という批判もありますが、思考の訓練としては、数学はかなり優れているのではないでしょうか。

纓田:新しい時代に即した指導を念頭に置く一方で、どういう姿勢で日々の授業を行っているのか、研鑽を常にしているのか、といった自分たちの足元を見つめていくことも大切です。中学受験や大学受験の指導という条件のもとで、生徒たちの力を伸ばすこともできれば、伸ばし損ねることもあり得ます。将来に役立つ力を生徒たちが手にしていく援助もできれば、スポイルしてしまうこともあります。

 自分の足元を見つめ直すという意味でも、「算数・数学の連携」は良いきっかけになります。ついつい私たちは自分の経験だけを基準にしがちですが、これからは、算数科の先生方と数学科の私たちの知恵と経験を束ねて、研鑽し合って成長していきたいと思います。

算数×数学講師座談会 出席者のご紹介

・眞田 素・・中学受験グノーブル教務本部長・算数科
・三浦 勇二・・大学受験グノーブル数学科・中学受験グノーブル算数科
・纓田 邦浩・・大学受験グノーブル数学科
・越川 将也・・大学受験グノーブル数学科