8回にわたり、中学受験グノーブルの国語科の先生による座談会を連載いたします。
-中学受験で伸ばす国語の力-
中学受験の国語の特色や効果的な学習法、グノーブルの指導や特色などについて国語科の先生4名に語っていただきました。(『グノレット』24号掲載「グノーブル 国語講師座談会」より)
第2回 中学入試の動向と社会の変化
-入試問題の変化は、少子高齢化やグローバル化に伴い、情勢が目まぐるしく変化する時代の中で、問題点を冷静に把握し、前例にとらわれない柔軟な思考力と行動力を発揮できる人材が強く求められていることと無関係ではないように思います。
兵頭:ここ15年くらいの大きな流れでいえば、最難関校とされる開成、桜蔭中の出題傾向が記述問題中心になったことが、多くの学校の入試問題に影響を与えたと思います。
大澤:もちろん選択問題中心の出題をする学校もありますが、全く記述問題が出ないという学校を探すのも難しくなってきています。また、2018年度の開成中で出題された例(※)が有名ですが、公立中高一貫校で出題される社会科と融合したような表やグラフから読み取って自分の考えを書かせる問題が増えています。
高橋:入試における知識分野の問われ方というのも変わってきていると感じます。例えば細かい文法事項を問う出題や、知識問題だけで大問を構成するような出題はほとんどの学校でなくなっています。語彙に関する出題であっても、文脈の中できちんとその言葉の意味がわかっているかどうかを問う学校が増えてきていると思います。
選択式か記述式かという形式的な側面以上に、問われているものの質そのものがかなり変わってきている印象があります。
覚えたことを当てはめて対応する力だけではなく、吟味しながら思考を働かせる力を問う出題が増えていると言えるでしょう。こうした出題は、以前であれば最難関といわれる学校で多く見られたのに対して、昨今では難易度を問わず多くの学校で見られるようになったと感じています。これは、少子高齢化やグローバル化に伴い、情勢が目まぐるしく変化する時代の中で、問題点を冷静に把握し、前例にとらわれない柔軟な思考力と行動力を発揮できる人材が強く求められていることと無関係ではないように思えます。
山下:今の話を踏まえてですが、中学校側からすると、形式的に量をこなすような受験勉強に対する不信感、疎ましさというのがあるように思います。中学入試では慣用句が出るぞ、じゃあ慣用句を100個覚えよう、ほら出た、点が取れた、というようなことではなく、きちんと言葉の知識、素養を身につけている生徒に入学してほしい。そういう現場の先生の思いから、一覧表の暗記で対応できる単純な知識問題は減ってきたのではないかと予想します。
また、大問一つひとつの文章の長さはとても長くなっています。20年前と比較すると1.5倍くらい長くなっている印象です。中学受験ではある程度のボリュームがある文章を読み切る力が必要でしょう。この長文化と知識問題に関する現象というのは関係があるように思います。どれだけその場で考えているかということを重視しているのです。
設問形式でいうと、選択式の問題であれば、どれかひとつが正しいという前提で正解を探すことになりますが、記述問題というのはそういう用意された正解がありません。自分で読み、考えて自分で説明するしかないのです。記述問題には生徒のそういった力を見たいという意図があるのでしょう。
ところで一般に記述問題イコール文章力、表現力を問われていると解釈する傾向があります。そういう力が皆無では困りますが、文章をきちんと読み、その内容を自分で整理し脈絡をつけて人に差し出す力、すなわち説明力こそが本来的な記述力なのです。
兵頭:保護者の方々が受験された時代とは、出題傾向の上ではかなり違うものがあると思います。一概に難しくなっているというわけではありませんが、出題内容が高度になっていることは間違いないと思います。
山下:ただし、昔とは違ってきているという認識は大切ですが、事前に保護者の方が入試問題に目を通し、研究し、家での指導に役立てる、要するに教える、というようなことは必要ありません。よほど成熟し、仕上がった状態の子どもでないと、いきなり入試問題そのものに当たってもきちんと理解することはできないからです。
※デパートで販売しているお弁当の売れ行きに関するグラフを基にした問題が出題されました。
国語講師座談会 出席者のご紹介
大澤 塁・高橋 祥一郎・兵頭 徹治・山下 倫央(中学受験グノーブル国語科)