5回にわたり、中学受験グノーブルの理科科の先生による座談会を連載いたします。

-中学受験を通して伸ばす理科の力-
中学受験の理科の特色や効果的な学習法、グノーブルの理科の指導や授業の特色などについて理科科の先生3名に語っていただきました。(『グノレット』18号掲載予定「グノーブル 理科講師座談会」より)

中学受験の理科の特徴とは

 

nagai永井 中学受験の理科の特色のひとつは学習する単元がとても多いということです。物理・化学・地学・生物の全分野を学習し、各分野の細かい単元を数えれば20~30単元ある上に、それぞれの単元の学習内容は決して浅いわけではありません。ある面では、高校受験の理科よりも広くて深い学習が要求されます。また、大学受験ですと分野を絞る入試形態もありますが、あえて小学生に全分野のある程度深いところまで勉強させるというのが中学受験の理科の特徴なのだと言えます。

身の回りの生物や現象といった等身大の世界の理科に対して興味関心を抱き、理由やしくみを考え学ぶ、その一方で化学的なミクロの世界で物事をとらえたり、天体といったマクロの世界で事象を分析したりと、そのスケールの大きさや幅の広さはとても面白いものです。小学生は「まだ何も描かれていない真っ白なキャンバス」「まだ水を吸っていないやわらかいスポンジ」であり、そのキャンバスやスポンジの大きさも決まっていません。こういった時期にいろいろな科学の世界に触れて、さまざまな事象を多角的に見ていく経験を積むことに中学受験の理科の意義があります。我々講師よりも子どもたちの方が鋭く、発想や感性が豊かで、我々が考えもしないことを発言します。私たちが勝っているのは経験くらいでしょうか(笑)。子どもたちの可能性は無限であることをきちんと認識したうえで、範囲を設けずに且つしっかりとした土台を養成することが大切だと考えています。


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 私は、理科はその中で計算が出てくれば算数に近い、本文や問題文の読み取りが要求されれば国語に近い、覚えることが必要という面では社会に近い、というようなことを保護者の皆様によくお話しています。結論としては、算数と国語と社会のそれぞれのすべてが使われるのが理科なのです。もちろん理科として勉強すべき面はあります。理科特有の原理や法則はきちんと理解して使いこなせなくてはいけませんが、先に述べたように算数と国語と社会のそれぞれの能力を高めることによって、より理解を深めることができるのが理科です。 

理科を教える者としては理科の勉強をしてほしいと言いたいところですが、そういった基となる学力がまだ身についていない生徒にとっては厳しい要求です。算数が得意な生徒は理科が得意なことが多いのですが、逆に算数ができるのに理科は不得意という場合は、必要な知識が身についていなかったり読み取りが苦手であったりといったことが原因であることが多く、全般的な学力を高める必要があります。こうした場合は決して短期間で解決できる問題ではないため、じっくりと腰をすえて子どもたちの成長を促すような授業をしていく必要があります。

uehara上原 理科は物理・化学・地学・生物の4分野で、知識、計算、原理原則の理解、そしてそれらを活用しなくてはいけない科目でありさまざまな力が必要です。そのため分野・単元によっていろいろな学習の仕方があります。私自身も子どもたちと勉強する中で、その様子をうかがいながら効果的な学習方法を模索して指導しています。

特に重要なのは、原理原則の理解からの思考力、学んだ知識や原理原則をどう使っていくかということです。それこそが理科であり、近年の中学入試にも当然問われています。2020年度からの大学入試改革がよく話題にのぼる昨今ですが、今後は知識や技能に加え、より一層思考力や判断力、表現力など幅の広い力が問われるようになります。中学受験の理科の学習を通して、そういった力の礎を養っていくことは子どもたちの将来に大きく影響することだと考えています。

理科講師座談会 出席者のご紹介

上原 佑・永井 裕康・森 英明(中学受験グノーブル理科科)